“維”旅レポート

 

第2回 三浦太鼓店 三浦彌市 (みうら やいち) さん

 

“維”旅レポート、第2回目は愛知県岡崎市に足を運んでみました。

 

ご紹介するのは三浦太鼓店、代表取締役の5代目三浦彌市さん。

自ら太鼓を作る職人さんです。

 

創業は慶応元年(1865年)、和太鼓の製造販売を行う伝統あるお店です。

 

名前は以前から知っていたものの、伺ったのは初めてで、お店に行ってみるとまず最初にその店の小ささにびっくり。。。。

太鼓を作るということはある程度の広さがあるのだろうと思っていたのを見事に覆されました。本当に小さな工房の中で5代目三浦彌市さんは、息子さんの三浦和也さんと共に和太鼓と向き合っていました。

 

地域に密着した温かい雰囲気を感じ、最初からリラックスムードでお話を聞くことができました。

 

 

三浦太鼓店の始まりについて伺ってみると、意外な答えが返ってきました。

 

「初代三浦彌市は岡崎の隣の豊田市出身なんですがね、何故太鼓屋になったのかは全くわからないのですよ()

まぁ、岡崎は徳川家康さんが生まれた土地、城下町だから古い職人さんも多いし、江戸中期から後期にかけてお祭を庶民が楽しむようになった時期だから、太鼓屋も繁盛したんでしょうね。」

 

とのこと、その原点は謎に包まれてるそうです。

確かに江戸時代中期以降はそれまでにないほど時代が安定し、民衆の娯楽が色々な方向へと発展していった時代。

平安時代も長い時代だったゆえに、貴族によって色々な文化が生まれ洗練されていった時代ですが、江戸時代はそれがもっと民衆へと下りてきたように思えます。

 

 

初代三浦彌市さん作の太鼓も随分残っているそうで、お店に伺った時にも

“明治13年 三浦彌市作”と記された28寸の平太鼓がありました。

 

「近くの神社やお寺の太鼓が修理に来ると、代々の三浦彌市作の太鼓が結構あるんですよ。太鼓屋は本来地元密着のものだということがよくわかりますね。」

 

とのこと。和太鼓はとても息が長い楽器。

それは最近よく思うことなのですが、こうして、時代を超えてご先祖さまと巡り合うなんて、とても素敵です。

まさしく歴史を超えて人と人とを“維ぐ”和太鼓、ということですね。

 

 

彌市さんが、今に至るまでをお話してくれました。

 

「私の父はあまり商売熱心ではなかったんですよ()

もちろん来てくださったお客様に対してはきっちりと仕事をしていたんですがね、積極的に商売を広げるという人ではなかったんです。時代的にも、今のように創作和太鼓というものが無く、戦争や大きな災害があって祭事も減っていった時代でした。

だから私が育った時代は本当に太鼓屋としての仕事が少なかったですね。

高校を卒業して、そんな状態ですから会社に勤めに出ました。

ただ中学くらいから父の手伝いをしていたので、20歳くらいには一通り太鼓作りのことはわかっていました。もちろん技術は今も磨いている最中ですが。

会社勤めしながら、土日や忙しいときだけ太鼓作りの手伝いをしていました。

 

父が亡くなったのが32歳の時で、その時私にも子どもが3人いましてね。

太鼓屋ではさすがに家庭を養える保障もないものですから、会社勤めしながら来てくださるお客様に対してだけしっかりと仕事をしていました。

そのうち趣味で太鼓をしている人が増えて、少しずつお客様が増えたんです。

 

それとね、15年前、娘が小学生の時に『太鼓を叩きたい』と言って地元のチームへ参加するようになりました。で、その送り迎えをしていたのですが、そこのチームの方に『どうせ送り迎えで来るなら一緒にやらないか』と言われまして、それならばということで40歳ちょっとで太鼓をたたくようになったのです。

 

そうすると、そこからネットワークが広がって、お仕事をいただくことが増えてきたんです。

 

それで『いつ会社を辞めて太鼓屋一本でやっていこうか』と考えていたところへ息子が『太鼓屋を手伝いたい』と言ってくれましてね、『それなら2人で頑張ろう』ということで会社を辞め、太鼓屋一本の道を進むことにしたんです。」

 

 

太鼓を打ち始めたことが一つの転機だったんですね。

 

「太鼓をやるきっかけは娘がくれて、太鼓屋一本でやっていくきっかけを息子がくれました」

 

と笑顔で彌市さんが言葉にしていたのがとても印象的でした。

親子の絆が、そこにはしっかりとありました。

 

 

さて、太鼓を叩き始めた彌市さん、お客様が増えたということだけではなく、太鼓職人としても大きな転機だったそうです。

 

 

<太鼓を叩く前と後でわかった明確な違いってなんですか?>

 

 

と質問してみました。

 

「自分が太鼓を叩くようになって、プロ奏者も含めて色々な方とご縁ができてお話をしていると・・・

今まで父親から教わってきた太鼓作りがちょっと違うんじゃないかなぁと思うようになったのです。もちろん父親の教えを否定するわけではなく、昔ながらの神社やお寺の太鼓と、今演奏に使うような太鼓は違うんじゃないかと思うようになりました。

それで皮のことや、胴の作り方など、演奏に合うものをとにかく勉強しました。

 

自分が演奏する、息子がチームを作り演奏活動をするようになって大事にしていることは

 

-とにかくお客様が喜んでいただけるような太鼓を作りたい-

 

ということです。

なので、注文を受けた方々には、太鼓の皮を張る時にはできるだけ立ち会って欲しいと伝えています。

お客様の納得のいく音を作りたいのです。

 

太鼓は安いものではないので、納品した後にとにかく満足してほしい、そんな想いですね。」

 

 

そうなんです!

自分もびっくりしたことなのですが、

ある太鼓の修理を三浦太鼓店にお願いしたところ、その皮を張る時に立ち会ってほしいと言われ、皮張りに立ち会いました。

実際にきれいに磨かれた胴に皮を合わせ、ジャッキで引っ張りながら音を調整していき、自分の納得する音の高さ、張りにしてくれるんです。

今後どういった場所で使うか、使う頻度や、張った後の皮の緩み加減まで話し合いながら調整してくれました。

そして鋲打ちまでさせていただきました。

自分で鋲を打った太鼓は、さらに愛着が沸き、そこにもっと感謝の想いや念が籠るような気がしました。

 

貴重な経験でした。

彌市さんの

 

-今の時代に合った、奏者のニーズに合った太鼓を作りたい-

 

という想いがすごく伝わりました。

 

 

 

<チャラボコ太鼓>

 

「愛知県三河地域には『チャラボコ太鼓』という太鼓があって、ここで使われる締太鼓の胴は真鍮でできています。変わっているでしょう?この太鼓と、コンコロ太鼓と呼ばれる太鼓や笛で演奏される祭り囃子が江戸時代中期以降とても盛んになったそうです。もしかしたらこれもあって初代三浦彌市は太鼓屋さんを始めたのかもしれないですよね。」

 

この真鍮胴の太鼓、初めて見ましたが、確かに胴が輝いてました。

『チャラボコ太鼓』は愛知県三河地方の各地域で演奏され、町内ごとにお囃子を競い合ったことから、それぞれの町内が、自分たちのお囃子がより良いものであるように、すごく音へのこだわりが強くなったそうです。

 

なので太鼓の皮の張替え時には、その町内の方が良い音を求め、立ち会いのもと張替えが行われていたそうです。

 

なので、皮張りの立ち合いは実は昔からで、そこにあまり違和感は無かったそうです。

 

 

 

<岡崎桜まつり太鼓フェスティバル/佐久島太鼓フェスティバル>

 

この2つの太鼓フェスティバル、5代目三浦彌市さんが主導で動き、現在も続いている太鼓フェスティバルです。

 

「岡崎には太鼓チームがたくさんあるのに、一同に会して発表することがない・・・

なんとかならないかなぁと思って始めたのが『岡崎さくら祭り太鼓フェスティバル』です。

 

『佐久島太鼓フェスティバル』は毎年チームで佐久島に遊びに行っていたのがきっかけでね、海水浴場の脇で自分たちの太鼓を持って行って好き勝手叩いていたところから、色々なご縁で、島の活性化、町おこしを太鼓で、、、という話からスタートしたんです。

 

太鼓をたたくようになって、作るだけでなく、色々な人達にこの太鼓を知ってほしいなぁという想いが強くなりました。

 

太鼓チーム同士の交流も生まれてきて、今では本当にやって良かったなぁと思っています。」

 

 

太鼓を通して人を“維ぐ”活動をなさっている彌市さん、すごいですね。

太鼓屋だからこそできる彌市さんならではの発想と行動力があってこその活動、尊敬します。

 

 

 

<親子で仕事をするということはどうですか?>

 

自分も兄弟とともに演奏活動をしているので、ちょっと気になって聞いてみました()

 

「その質問の答えになるかどうかはわからないのですが・・・・

 

ずっと、太鼓の商売をいつまで続けられるか、本当に不安でした。

ただ、昔からのお客様がいて、頼りにされている、その人達のためにも続けなくてはいけないなと思っていました。

父親が亡くなった時に、<太鼓屋をやめて会社を頑張る>か<太鼓屋一本で会社をやめる>という選択肢があったのですが、今まで当店を頼ってきてくださった地元の方々がいる限り、決してやめてはいけない、自分の代でそれを終わらせてはいけない、自分から辞めてはいけないと、経済的な理由もあり会社勤めもしながらでなかなか大変でしたが、その想いで続けていました。

 

ただ、息子に太鼓屋をやれとは全く言わなかったですね。もしやらなければそれはそれでいい。私の代まではしっかりとやろうと思っていました。

 

そうしたら息子が手伝うと言ってくれて・・・今となっては本当に良かったなぁと思っています。」

 

<けんかをすることはありますか?>

 

やはり気になったので()聞いてみました。

 

「お互いに頑固で、太鼓を作る上でこだわる部分が違うからぶつかることはありますよ。まぁ息子の意見を尊重したり・・・わたしは寛大ですから()

という冗談はさておき、わたしももう57歳、もうすぐ息子の代になります。息子の思うようにやったらいいと思うのです。

自分が父親から教わったことを否定はしないが、時代に合った太鼓を作るために変えてきました。

だから息子は息子なりに考えて変えていくことは悪いことではないと思います。

でないと進歩がないですから。」

 

 

やはり家族でこういった仕事をするということは、難しい部分はあっても、それ以上に大きな良き部分があるような気がします。

彌市さんのお話を聞いていると、それが何かと具体的にわからずとも、その大事さが身に沁みてきました。

 

 

<これからの夢や目標はなんですか?>

 

「今太鼓を楽しんで使っている皆さんが憩えるような、集えるような場所を作りたいですね。

例えば合宿をしたりとか、イベントが行えたりとか、そういったことができる場所、太鼓のテーマパークのようなものを作ってみたいですね。」

 

 

太鼓のテーマパーク、いいですね。

自分は東京生まれ東京育ち、とにかく太鼓を打てる環境があまりにも少なく、それはつまり太鼓を知らない方々が太鼓に触れる機会も少ないということ。

この状況の改善にも繋がっていく気がします。

 

 

5代目三浦彌市さんにとって、和太鼓の魅力ってなんですか?>

 

最後に質問しました。

 

「そうですね・・・

やはり叩けば音が出る楽器だということ、誰でもできる、入りやすいことがなによりも魅力ではないでしょうか。

そういう意味ではこれからもっと世界へ広がっていくのではないですかね。

 

あとは他の楽器にはない<ズン!>と来る感覚、これも非常に魅力的です。

 

小さい子は3歳くらいから7080歳のお年寄りまで、みんなで楽しめる楽器、なかなかないですよね。

わたしはね、娘と一緒の太鼓チームに入って良かったと思っています。

ただでさえ、今は引きこもる子どもたちも多く、外で走り回って遊ぶことが減ってきてしまった社会の中で、年齢層様々な人が集まった太鼓チームはひとつの社会であり、一緒に行動したり楽器を演奏することはとても社会勉強にもなると思います。

 

そんな様々な人達が一緒に演奏して、楽しんで楽しんで使う楽器だし、

それを聞いた人達もみんな楽しくなる、

そんな楽器を作らせていただいている、本当に良い仕事をさせていただいているなぁと思っています。」

 

 

太鼓の魅力を聞いた時に返ってきた言葉が、第1回の宮本芳彦さんの答えとほとんど一緒だったことにびっくりしました。

和太鼓の魅力ってなんだろうと、いつも自問自答しながら色んな答えを探しつつ、色んな魅力を頭に浮かべはするものの、やっぱりここに戻る自分の頭をスッキリさせてくれました。

 

難しく考えずとも、答えはいつも単純なのかもしれませんね。

 

職人さんとこうして向かい合ってお話をさせていただく機会はあまり無いのでとても貴重なお話を聞かせていただきました。

 

息子・娘を愛する父としての顔、

代々受け継がれてきた太鼓へと向き合う太鼓職人としての顔、

そして太鼓を通して人々を笑顔にするために真っ直ぐ生きるヒトとしての顔が見えた5代目三浦彌市さん。

 

とても温かい人でした。

 

お話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

 

 

取材日 2013.4.10

『つなぐ便り』配信開始!

「つなぐ便り」5月22日便

配信しました!

届かなかった方は、

mail@taiko-tsunagu.com

までご連絡ください。

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